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今日も幸せレイリタ日和。
2025/04/21 (Mon)10:08
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2011/12/18 (Sun)19:14
何とか終わりました!
ツイッターでも呟いてたクリスマス小説です!!

とにかく間に合わせることを優先して描いた代物ですがよろしければどうぞ。


※注意

・「おとうさんといっしょ!」設定

・キャラ崩壊(今回の被害者→ソムラス)

・無駄な文字数

・途中から力尽きてるので落ち着いたら加筆・訂正する可能性大

・上記の理由で割愛してる部分もあるのでその内補足編を書く可能性大

・別にクリスマスだからってこんな話にする必要なくね?


そんな感じでどうぞ。

おとうさんとくりすます!(前篇)


「もうすぐ、クリスマスだな……」

 職務の合間にふと呟くと、執務机を挟んで正面に立っていた部下が書類の束を落とした。
 視線を上げてみると、彼は床に散らばった書類には目もくれず何か恐ろしいものをみるような目をこちらに向け、真っ青な顔でがたがたと震えている。
「どうした、シュヴァーン」
「どどっどっどどどどどっどどうしたじゃないですよ! 大将こそどうしたんですか!!
 鬼畜で人使いが荒くて仕事中毒で腹黒で鬼畜で外道な大将から自発的にクリスマスなんて単語が出るなんて……!!」
 世界の終わりだと言わんばかりの怯えっぷりに普段自分はそう思われているのかと若干反省しつつ、それ以上に感じた容赦ない物騒な形容への怒りのまま持っていた万年筆を投げつける。鬼畜が2回出てきた件についても言及したい所ではあるが、さくっとなかなか小気味の良い音がしたのでこれで勘弁してやろう。
「……さて、リタに何をやろうか……」
 何事もなかったかのように腕を組み、片手で顎をつまんで考え込む。リタを養女にしてから初めてのクリスマス、何をやれば〝愛娘″は喜んでくれるだろうか。
 思えば騎士になって十数年、仕事とは一切関係のないこの手のイベントにはまともにかかわった記憶がない。なる程シュヴァーンが驚く訳だ。
「魔導器関連の本もいいがそれなら普段から買ってやっているし、最近は私の蔵書も理解し始めているからわざわざ一般的なものを買ってやる必要もあるまい」
「ヤッパリ年ニ1回ノ行事ダシ、特別ナモノガイイデスヨネ」
 額に万年筆が刺さったまま、シュヴァーンが書類を拾いながら相槌を打ってくる。やや言葉に精気が感じられないような気もするがまあいいだろう、書類を血で汚さない限りは。
 少し椅子を回して背後の窓から見下ろせば、中庭でエステリーゼ姫と落ち葉を拾って見せあっているリタの姿。最近は魔導器に関する書籍を読みふけるだけでなく、ああして年の近い友達と遊ぶことも多くなった。それはきっと彼女の成長にとっては好ましいことなのだろうが、リタが執務室にいることが当たり前になりつつあったアレクセイにとっては少しばかり寂しいことだったりする。
「特別なものか……」
 シュヴァーンの意見を自分でも繰り返しながら、該当しそうなものを思い浮かべて行く。いくら頭脳明晰とはいえ、あれくらいの年齢ならまだぬいぐるみやおもちゃなどでも喜んでくれるだろう。だがどうせならそんなありふれたものではなく、本当に特別なもので思い切り喜ばせてやりたい。
「……楽しそうですね」
 じっと考え込んでいると、やがてシュヴァーンのやたら優しい声が振ってくる。振り向くと書類を拾い終えた(ついでに血も拭い終えた)彼は柔らかく微笑んでおり、まるでリタを見守る自分を更に見守っているような――
「お前はあれか、おかん属性というやつか」
「何を今更言ってるんですか、大将みたいなぎこちない父親を見ていたら嫌でもそうなりますよ」
 不躾な質問に不躾にそう返され一瞬イラっとするが、しかし実際自分がぎこちない父親であるのは事実なので何も言い返せない。彼にはリタのことでアドバイスやフォローを入れてもらったりして何かと世話になっているし、確かに今更と言えば今更だ。
「ま、クリスマスまでにはまだ日もありますし、もう少し考えてみましょう。
 では、俺はこれで。そろそろ隊の訓練の時間なので」
 そう言うとシュヴァーンは敬礼し、身を翻す。ああそう言えば、今は勤務時間中だったか。仕事中毒とまで評された自分にそんなことすら忘れさせてしまった原因の愛娘が中庭で笑う声を聞きながら、アレクセイは苦笑した。

 

「と、言う訳で――」
 午後3時、仕事が一段落ついた騎士団長の執務室に呼び出され、人数分の紅茶の並べられた応接用のテーブルをぐるりと囲んでいるのは親衛隊とキャナリ隊の数名。手の空いている者の中から適当に呼び寄せた面々なので、クオマレやヒスームなど本来の親衛隊とは別の(むしろアレクセイやシュヴァーンとは敵対しているともいえる)某親衛隊のメンバーも混ざっているが致し方あるまい。
「リタへのクリスマスプレゼントは何がいいか、不甲斐ない父親の代わりにみんなで考えたいと思う」
「今さらっと失礼なことを言わなかったか?」
 ごほんと咳払いを一つしてからそう切り出したシュヴァーンに上座のアレクセイはすかさずツッコミを入れるが、彼は構わず話を続ける。
「金も権力も持ち合わせている閣下は、日ごろからリタには魔導器関係の本を中心に色々と買い与えている。だから普段買わないような特別なものをプレゼントしてやりたいと、まあそれなりに殊勝なことを考えているらしい」
 事実ではあるが一々棘のある言い方だ。もしや先ほどの件を根に持っているのだろうか。
「はい。それって玩具とかぬいぐるみってことですか?」
 礼儀正しく手を挙げてそう質問したのはキャナリ小隊のソムラスだ。
「うむ。しかしただの玩具やぬいぐるみもありきたり過ぎではないかと思ってな」
 彼の問いにそう答えながら、アレクセイはひじ掛けに立てた腕を組みその上に顎を乗せる。
「私たちが親子になってから初めてのクリスマスだからな、リタには精一杯楽しんでもらいたいのだ」
 その考えを聞いた何人かが顔を青くするのを、アレクセイ本人は見逃さなかった。一体自分は騎士達にどう思われているのだろうか。
 そんな中紅茶を啜っていた親衛隊のシムンデルが深く頷き、生真面目な口調で申し出る
「閣下のお考えはよく分かりました。私たちもクリスマスプレゼントについて考えてみましょう。
 とりあえず、リタ様が好きなものから当たるのが定石か」
「あ、それならここにデータが」
 そこで口を挟んだのは、アレクセイとシュヴァーンから密かに要注意人物の認定を受けているクオマレ。2人は、何のデータだ、とツッコミを入れたくなるが何となく予想がついたので複雑な顔をするに留まる。
 彼は持ってきていたノートをペラペラとめくり、ページに挟んでいた紙きれを取り出した。ここからでは裏面であるため何が書いてあるかは読めないが、うっすらと〝♪リタにゃんの好きなものリスト♪″と見える気がする。
「えっと、リタにゃ……リタ様の好きなものは魔導器全般及びそれに関する書籍、ドネルケバブ、クレープ、猫……後はエステリーゼ様、キャナリ小隊長、シュヴァーン隊長、そしてアレクセイ閣下……といったところですかね。
 ……あれ、どうされました? 2人共」
『……いや、何でもない』
 最後に自分の名前が付け足された途端目頭を押さえるアレクセイとシュヴァーンにクオマレは首を傾げるが、2人はすぐに首を振って話を本題に戻す。
「あまり目新しい情報はないようですね」
「うむ、どうしたものか……」
 むう、腕を組んでと考え込むアレクセイ以下騎士の面々。そんな中、唯一の女性であるキャナリが手を挙げる。
「あの、リタに直接聞けばいいのではないですか? もらって嬉しいものは本人が1番よく知っていますし、下手に凝ったものをあげてもリタが困るだけかもしれませんよ?」
『………………』
 流石女性、現実的である。世の男たちがこぞってプレゼントに頭を抱える一方で、そのお相手の考えはこれなのだ。嗚呼、男女関係とはかくも難しいものなのか。
 今回は男女ではなく親子の関係となる訳だが、しかしむさ苦しい連中で暗中模索するよりは確かにその方が確実だろう。他のものを考えるにしても、参考程度に聞いておくのも悪くはない。
「じゃ、じゃあ今度俺がそれとなくリタに聞いておきますよ」
「む……」
 虚しさに笑いを引き攣らせながらシュヴァーンがそうまとめると、アレクセイは複雑そうな顔をしながらも頷いて紅茶を啜る。
 その時――

「あ、でも『お母さんに会いたい』とかだったりして☆」

 がちゃーん!

 冗談交じりでソムラスが放った一言で、アレクセイの手からカップが滑り落ち場の空気が凍りつく。
「ソムラス、お前……っ!」
「え、どうしたんですか? だってリタ様は――」
「あああああ閣下ちょっと待ってください! 今黙らせますので!!」
 ソムラスの首を締め上げながら、キャナリ隊のヒスームとゲアモンが彼を執務室の外へと運んでいく。
 尚、この2人は先述の某親衛隊の人間だがアレクセイのことは尊敬しているし、この親子の関係を壊すことが目的ではない(むしろ良好な関係が築かれることを切に願っている)らしい。
(本当に恐ろしいのはド天然の方だったか……)
 引きずりだされるソムラスを眺めながら、シュヴァーンは胸中で苦々しくそう呟いた。
「か、閣下……ソムラスのアホの言うことはあまり気になされない方が……」
「そうですよ! リタ様は毎日楽しそうにしてらっしゃるじゃないですか!!」
 残った親衛隊の面々は、固まっているアレクセイをどうにか励まそうとしている。
「……ははは、ああ大丈夫だ。ソムラスも悪気があったのではあるまい。リタにしても、まだ母親に甘えたい盛りの年頃だろう……むしろ可愛げがあっていいではないか」
 アレクセイは部下たちの気遣いにそう答えながら、さも気にしていない様子で割れたカップを拾い集め始めてみせるが、乾いた笑い声といい破片でざくざく切っている指といい、どう見ても大丈夫ではない。
「か、閣下……カップは私が片付けますから。あまり指を傷つけられては執務に差し支えますよ?」
 流石のキャナリもその様子を見かねたのか、ハンカチを差し出しながらそう申し出る。そこでようやく自分の指の惨状に気付いたのか、アレクセイはしばらく手元を眺めてからそっと今まで集めていた破片をまとめて置き、彼女のハンカチを受け取る。
 そしてそのままふらりと立ち上がり、痛々しい笑顔を一同に向けて言う。
「皆、わざわざ集まってもらって済まなかったな。悪いがカップの始末はお願いするよ、済んだら職務に戻ってくれたまえ。
 ……私は、医務室に行ってくる……」
 そしてハンカチで指を抑えながら、どことなくおぼつかない足取りで部屋の出入り口へと向かう。直前、扉の向こう側から(おそらく聞き耳を立てていたヒスームとゲアモンのものと思われる)慌ただしい足音が発生し遠ざかって行ったが、それを気にかけることもなく彼は扉を開け廊下へと姿を消した。
 ぱたり、と扉が閉まって数秒間、そちらを眺めていたキャナリが膝を折り、カップの破片に手を伸ばしながら呟く。
「閣下、やっぱり気にしていらしたのね、リタの両親のこと」
「そうだな」
 キャナリより先にカップに手を伸ばして拾いながら、シュヴァーンも頷いた。
「リタは聞き分けのいい娘だからな、俺もうっかり忘れてしまいそうになるよ……でも、本当は寂しい筈なんだ。俺たちや大将がどんなに頑張った所で、本当の親を亡くした辛さを完全に埋められはしない」
 アレクセイがリタに注いでいる愛情は本物だ、だからこそ、彼も本当は不安なのだろう。募った寂しさに、リタが耐えきれなくなってしまうことが。
 部屋の隅に積んであった不要な書類をクオマレが持ってきてくれたので、集めた破片をそれに乗せて包めば、片付けは完了。後はこの包みを捨てるだけだ。
「シュヴァーン隊長、私たちも出来る限り協力します。閣下とリタ様のことで何かあったら、何なりとお申し付けください」
「……ああ、ありがとう」
 ならばまずはリタに関する如何わしい活動を止めてほしいところではあるが、誠実なその態度に、シュヴァーンは大人しく善意(と信じたい)を受け取ることにした。

 

 一日の職務を終えたアレクセイは、やや足早に私室に戻る。今日は残業せずに済みそうだからと、リタと一緒に夕食を摂る約束をしていたのだ。普段は一足先に仕事を終えたシュヴァーンやキャナリが食堂に連れて行ったり私室に招いたりして一緒に食べてくれている筈なのだが、今朝アレクセイがそう申し出るとリタは特別嬉しそうな顔をしてくれた。
「ただいま、リタ」
「あ、あれくせい!」
 私室のドアを開けると同時に、部屋の隅にある魔導器――ビクトリアの傍で本を広げていたリタが立ち上がり、笑顔で駆け寄ってくる。
「おかえりー!」
 その場にしゃがみ込んで両手を広げれば、彼女は勢いをつけて胸に飛び込んできた。久々に定時帰宅したことがそんなに嬉しかったのだろうかと思う一方で、アレクセイも愛娘との夕食を楽しみにしていたのは事実だ。
「あれくせい、りたおなかすいたー」
「ああすまない、少し遅くなってしまったな。帰ってくる時にディナーを頼んでおいたから、もうすぐこちらに運んで来てもらえるはずだ」
「わーい、でぃなー!」
 きゃっきゃと喜ぶリタに頬を緩ませながら、アレクセイはその小さな身体を抱き上げ部屋のソファに座る。
「今日はエステリーゼ様と何をして遊んでいたんだ?」
「んーっとね、としょしつでほんをよんで、じゅつしきのときあいっこして、しるとぶらすてぃあをかんさつしてたの」
 アレクセイの膝の上に乗る形で活き活きとそう報告するリタ。つまりエステリーゼ姫はリタの専門的な遊びに付き合わされていたということになる。それでも嫌な顔一つせずにこの娘の遊び相手になってくれている幼い姫君(まあ、本人も好奇心の強い方なので楽しんではいるのだろうが)の優しさに感謝しながら、アレクセイは「そうか」とその頭を撫でる。
「あ、それとね……これ、アレクセイにあげる!」
 そう言って彼女は自分のポケットから何かを取り出し、アレクセイに差し出した。
「えすてるといっしょになかにわでひろったの。きれいでしょ? あれくせいとおなじいろだよ」
 見事に紅く色付いたカエデの葉。虫食いもなく3本指の手を広げたような美しい形のそれが、アレクセイの顔の前でくるくると回る。
「ほう、本当に綺麗だな。ありがとうリタ、せっかくだから押し葉にして栞にでもしよう」
 これまであまり気にも留めてなかった自然の造形美をこうして認識させてくれるあたり、いくら魔導器の知識が豊富とはいえやはりリタは無邪気な子供だ。そう実感しながら、リタの手からカエデの葉を受け取る。
「……あれくせい、て、どうしたの?」
 その瞬間、ずっと笑顔だったリタの表情が曇った。しまった、と思った頃にはもう遅く、リタは包帯の巻かれたアレクセイの指に恐る恐る触れていた。
「ああ……実は今日、カップを割ってしまってな……片づけをする時に切ってしまったのだ」
「いたそう……」
「大丈夫だ、出血も止まっているし痛みもない。心配には及ばないよ」
 しかしリタはカエデの葉を掴んだアレクセイの指を更に両手で覆い、心配そうに眉尻を下げながら慈しむように撫でている。そんな心優しく可愛らしい愛娘の頭を再び撫でながら、ふと思い出すのはあの時の話題。

 リタは賢くて優しい娘だ。だがやはりあくまで子供なのだ。実の母親と、ありふれていながらも幸せな生活を送っている筈の。それなのに彼女は母親を亡くし、血の繋がりのない自分に引き取られ、その父親代行でさえ、魔導器の研究書を一緒に読むだけで最近は食事の席も一緒になってやれない。
 本当は、リタはもっとわがままを言いたいのに自分に気を遣ってくれているだけではないのか? 本当は、自分などよりもっとリタの世話をしてやれる人間が引き取ってやった方が良かったのではないか?
 本当は、本当は――

「あれくせい……?」
 急に押し黙ってしまったアレクセイに、リタが首を傾げる。その何でもない仕草さえ、愛しくて堪らないのに――
「リタ、君は――」
 聞こうとしたのはクリスマスプレゼントか、はたまた別の何かか……だがそれは質問として言葉を成す前に、ノックの音で遮られる。
「閣下、ディナーをお持ちしました」
 扉の向こうから、厨房からの使いの声が聞こえてきた。焦らされたような、救われたような良く分からない感覚に陥りながら、一つ深い息を吐いて膝の上のリタを下ろす。
「ほらリタ、お待ちかねのディナーだぞ。支度をしよう」
「うんっ」
 リタがまだ少し不安そうな顔をしていたので気を取り直すようにそう言って微笑んで見せると、少しは安心させられたのか笑顔で大きく頷いてくれた。
 使いの者に入室を促し、手をつないで食卓のある部屋へと向かう。包帯越しに伝わってくる子供独特の少し高い体温が、今ばかりは少し気まずかった。

 

 クリスマスが近いということは年の瀬も近いということだ。東方のある地域ではこの月のことを師が走り回る月と表現するらしいが、なるほどもっともである。ただ、騎士団で走り回っているのは実質末端の者達で、上層部は逆に走り回る暇すらない。
 通常のデスクワークに加え、今年の決算やら活動報告やら、来年の予算やら人事やらと、年末までにまとめなければならないものが多い。しかも、面倒事はよりにもよってまとまってやってくる。
「やはり、カクターフ公の動向に不審な点が見られます」
 執務机の正面に立ったシュヴァーンは正規の書類とは別に懐から報告書を取り出し、アレクセイに手渡す。
「最近新たに雇った警備兵が屋敷から頻繁に外出しており、行き先はほぼカプワ・ノールであることが判明しています。ノールの執政官はカクターフの子飼いの者で、屋敷の護衛と称してギルドを雇っているようです。
 ……おそらく、警備兵はその執政官及びギルドへの使者かと」
 報告書に目を走らせ、シュヴァーンの簡潔な報告を聞くアレクセイの眉間に皺が増える。騎士団――というかアレクセイを目の敵にしている評議会の者たちが騎士ではなくギルド員を護衛に付けるのは今や珍しいことではないが、そのギルドが発端で過去に何度もいざこざが起きている。当然、その裏で糸を引いているのは評議会だ。
「ノールで雇われているギルドの詳細は?」
「紅の絆、ギルド・ユニオンの5大ギルドにも名を連ねている傭兵ギルドですね」
「ユニオン、か……」
 報告書を一旦置き、顎をつまんで考え込むアレクセイ。
「仮にその傭兵ギルドが帝国に何らかの危害を加えようとしているとして、ホワイトホースが一枚噛んでいると思うか?」
「いいえ」
 彼の問いには既に否定の推測が含まれており、シュヴァーンも即座に首を横に振った。
「ホワイトホースは、ダングレストやギルドの利益を目的にしている筈……こちらが歩み寄りを見せている今、帝国と事を構えるというリスクの高い行動に出るとは思えません」
「だろうな。確かにあの老人は食えない男だが、裏でこそこそ貴族と策謀を巡らせるのは彼の手法ではないだろう」
 何度か公式、非公式に会見をしている限りで掴んだギルドの統治者についての印象。それは2人の間で一致し、彼の老人への疑いはあっさりと晴れる。自分が騎士団長になってようやく敵対関係から脱却しつつある中、その関係を無為に壊すのも壊されるのも何とか回避したいところであり、ホワイトホースとてそれは同じ筈なのだ。……まあ、まだお互いに腹の探り合いの段階なのだが。
「となれば、少々泳がせておいてから尻尾を掴むのも悪くない……が、ユニオン内での紅の絆の動向も気になるな。ホワイトホースに使いでも送るか」
 そこで一先ず話の方が付きどちらからともなく溜息が漏れる。
「まったくこのクッソ忙しい時に……」
 先ほどまでの堅苦しい口調から普段の調子に戻り、恨めしそうに呟くシュヴァーン。
「忙しい時だからこそだろう。我々の目が机に向かいがちなこの時期なら、注意が逸らされるでも考えたのではないか?」
 アレクセイもまた、未だに権力を取り戻そうと画策している評議会を苦々しく思いながらそう口にする。自分が行っている改革は平民と貴族の仕切りを無くそうというものであり、これまで平民の苦労の上に胡坐をかいていた貴族達から反発が来ることは覚悟していたが、こうも度々火種が起きようとは……彼らのご執心には恐れ入る。
「だがいい機会だ、帝国とギルドの両側から探れば或いは――」
 したたかな眼光を光らせながら策略を練るアレクセイ。だがその言葉は、ノックもなしに部屋に転がり込んできたクオマレの叫び声によって遮られる。
「大変です閣下!!」
 何事かとそちらを見れば、乱暴に開け放されたドアの前でクオマレが荒い息を繰り返している。その顔は真っ青で、噴き出している冷や汗からも異常事態の発生が見て取れた。
「何かあったのか?」
 非礼への叱責もせず、アレクセイはそう尋ねる。彼の様子からして、自分が騎士団長になって以来の大事件が起きた……認めたくはないが、そう考えるのが道理だろうと覚悟を決める。
 先を促されたクオマレはまだしばらく肩を上下させていたが、どうにか息を整えると声を震わせながら報告を述べた。

「リタ様が……誘拐、されました……」














このシリーズでも仕事モードの主従を書きたいなーっと思って。

あ、管理人の中ではソムラスはド天然ですが何か?

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