ついでにアンケートで好評なので
ただしそれをぶち壊しかねない要素があるので以下の注意文を読んでお進みください。
※注意
・「断罪の日」の続き
・アレ←パティくさい
・閣下がゲロッたりします←ここ重要
・IFにIFを重ねすぎてもはや原作レイプどころの騒ぎではない
・勢いで書いたので尻切れトンボ
それではどうぞー。
紅と蒼の叙事的演劇
「生きたまま貴殿に償うには、どうすれば良いのだろうな……」
ベッドの脇に立ったパティを見つめ、アレクセイは苦笑する。
「無論、貴殿に何をしたところで私は許されるものではないのだろうが……どうすれば、貴殿が私への憎しみで苦しまなくて良くなるのか、私には分からないのだ。自分が消えること以外にはな」
「………………」
パティは、何も答えない……否、答えられなかった。この男が消えれば、少しは恨みも張らせるだろうと思っていたのは、彼女も一緒だった。
「……もう少し、このまま生きていることを許してはくれぬか?」
パティの返答を待つようにしばらく沈黙を挟んでから、彼女にも答えがないことを察したのかアレクセイは再び口を開く。
「貴殿らと共に旅をしながら、私なりに出来ることを考えてみたいと思う。だから、もし良ければ貴殿にも私の扱い方を考えていて欲しい。
……その上で、やはり私に生きる価値などないと判断した時は、いつでもいい――」
穏やかな口調で語る、迷った末の自分の決意。優柔不断だと叱られるかもしれない、まだ生温いと罵られるかもしれない、だがどんな蔑みの言葉でも受け入れよう、元よりそのつもりだ。
「君の手で、私を殺してくれ」
そう言って至極穏やかに微笑みかけるアレクセイを、パティはじっと見据えた。
世界全体に責任を感じ、ただでさえすぐに死に急ごうとするこの男とそんな約束を交わしたところで、果たしてそれは守られるのだろうか。どちらかが答えを出す前に自ら消えてしまいそうな、そんな印象さえ受けるというのに。
「……それまでは、死のうとはせんのか?」
「心掛けよう」
「お前が出した答えを、うちが認めなかったらどうする?」
「その時はまた別の方法を考えよう。少なくとも、貴殿と私のしがらみに関する最終的な判断はそちらに委ねる」
核心を避けた曖昧な返答だが、そこまで突き詰めることはできそうになかった。今明確な答えがないのは自分も同じ、その上、裁かれる側の提案に乗ろうとしているのだ。
「……分かった。じゃが1つだけ条件がある」
「何だね?」
パティが首を縦に振ったことに少しばかりの安堵を感じつつ、続く言葉にアレクセイは首を傾げる。
「この約束を果たす時まで、アイフリードは休みじゃ。うちはあくまでパティ・フルール……おまえもそう呼べ」
自分はアイフリードとして仇を裁けなかった。ならば、パティとして彼を見極めてみよう。それが、パティが自分なりに考えた結果だった。
「……了解した。では改めてよろしく頼む、フルール」
一瞬動いた毛布は、握手のために差し出そうとした手だったのだろうか……だがアレクセイはそう頷くだけで、結局その手を出すことはなかった。
立ち寄った街の宿屋で夕食を済ませ、いつものようにそそくさと宿を出る。
今日のメニューは肉を混ぜた野菜炒めと魚介の味噌汁。これがステーキなり焼き魚なり単品であったならばまだ誤魔化せたのだが、この調理法だと食べざるをえなかった。何より、一生懸命作ってくれたエステリーゼのことを考えると、残すに残せない。
目に付いたのは街のブロックとブロックを繋ぐ、川に掛かった大きな橋。あの下なら人目につくことはないだろう。仮に誰かに見られたとしても、ただの酔っ払いにしか見えないだろうが。
足を速めながら川原を下り、橋の下へと潜り込む。丁度他人の目が届かない程度のところまで進み、その場に膝をつく。普段日が当らないであろうその地面は幸い草も少なく、手だけで掘り進められる柔らかさだった。
なるべく急いで掘り返したいところではあるが、あまり激しく動くと今度は保たない。自分の動きをじれったく感じながらも、黙々と掘り続けるしかない。
やがて、十分な深さまで穴が届いたのと、消化器官が限界を迎えたのはほぼ同時――
「ぐ……う、ぇ……!!」
碌に消化もされないまま、胃液と共に逆流してくる今夜の夕食。酸が喉を焼く感覚と、姫君の苦労を無駄にする行為に涙を浮かべながら、アレクセイは穴に向かって吐き続ける。
これ以上、他者の命を自分の糧とすることを身体が拒絶していた。肉や魚は無条件で戻してしまう日が続き、日によっては野菜でさえ腹に収まってくれない。食事を作ってくれる者には申し訳ないと思いつつも、余計な心配をかけさせたくないという思いの方が遥かに大きく誰にも打ち明けられないまま現在に至っていた。
その時、自分の背中に誰かが触れた。嘔吐のため事前に気配を感じることもできず、突然の感覚に思わず肩が跳ねる。
少しだけ落ち着いてから視線を動かせば、自分の背中に手を乗せたまま横に立っていたのは海賊の少女。
「フルー……ル……ぅっ!」
「今はしゃべるな。楽になるまで吐け」
再び込み上げてきた胃の内容物を抑えるため口元に手を当てるアレクセイにパティはそう答え、彼の背中をさすり始めた。
吐瀉の臭いが充満し決して居心地がよい環境とは言えない場所に、なぜこの少女がいるのか、アレクセイには理解できない。だだ、こんな姿を1番見られたくなかった彼女が目の前にいて尚も吐き続ける自分が、惨めで仕方がなかった。
「……見苦しいところをお見せしてしまったな」
穴を埋め戻し、口を漱いでから、アレクセイはパティに言った。
「うちは海賊じゃ、野郎の粗相など見慣れておる」
目を背けながらもそう答えるパティは、ひょっとして気にするなと言ってくれているのだろうか。
「そうか、それはありがたいな」
苦笑してとりあえずそう返しながら、彼女の横にやや距離を置いて座り込む。しばらくはこうして身体を落ち着けた方が良いだろう。
「いつからじゃ……?」
橋桁に後頭部を預けたところでパティに尋ねられもう一度彼女を見ると、先日とある約束を交わした時のようにマリンブルーの瞳がじっとこちらを見据えてきていた。
紅と蒼、つくづく相容れない色だなと頭の片隅で思いながら、アレクセイは彼女の問いに答える。
「……死に損ねた時からずっと、な……。パンや麺など加工品はまだ食べられるのだが、肉や魚はどうしても身体が受け付けん」
「おっさんは知っておるのか?」
「いいや、あのお人好しが知ったらどんな行動を起こすかは目に見えているからな」
ぎっ、と鳴ったかすかな音は、彼女が歯を食いしばる音か拳を握りしめる音か。先程より苦い顔になってしまったパティの心情を正確に読み取ることはできないが、アレクセイは弱々しく笑って見せた。
「安心したまえ、勝手にのたれ死んだりはしないつもりだ……貴殿との約束だからな。胃が落ち着いたらその辺りで携帯食でも買って食べておくよ」
「……っ」
身体がどんなに拒絶しようとも、罪深き自分は裁きもなしにまだ倒れることは許されないのだ。そんな決意を込めて述べた言葉に、パティの顔が歪む。
「……フルール……?」
「しばらくここにおれッ!」
何故彼女がそんな顔をするのかと不思議に思って呼んでみると、いきなり人差し指を突きつけられ怒鳴るように命じられてしまった。
「あ、ああ……」
その勢いに押されるまま返事をするが、それを聞き届けたのかどうかも怪しいところでパティは背を向けて駆けだしている。残されたアレクセイはただ、返事をした口をポカンと開いたまま、その背中を見送るしかなかった。
不快な臭いがようやく薄れ、土と水の匂いがまた空気に戻り始めたところで、パティが再びやってきた。その首には、先程までなかった水筒が提げられている。
彼女はアレクセイのすぐ隣まで来ると、水筒の蓋を開けその中身を注ぎ始める。同時にに湧きだすのは湯気と、味噌の香り。
「……ほれ」
それをややぶっきらぼうに差し出して、パティは告げる。
「今日のみそ汁の残りじゃが具は抜いてある。水分と塩分は摂っておけ」
「………………」
座ったままのアレクセイは、差し出された味噌汁とパティを見つめながら何も答えない。
「……もしや魚の出汁も駄目なのか?」
ずっとそうしていると、突き出されていた手が怯んだように揺れる。アレクセイとしては彼女の行動が理解できず呆然としていただけなのだが、思わぬ方向に考えを至らせてしまったようだ。
「い、いや……大丈夫だ」
慌てて蓋を受け取って、両手で包みこむ。味噌汁を湛えたそれはほんのりと温かく、1度冷えたものがわざわざ飲みやすい温度にまで温められていることが分かった。
口をつけると味噌だけでなく磯の香りも鼻腔をくすぐり、人肌を少し超えた程度の汁と適度な塩分が嘔吐によって弱っていた食道や胃に優しく染み渡っていく気がする。
「……美味いな」
「当たり前じゃ、作ったのはエステルじゃがうち監修の味噌汁じゃからな」
アレクセイの心からの感想に頷きながら相槌を打ち、パティも彼の隣に座りこむ。
その行動にまた少々驚きつつも、アレクセイはおとなしく蓋に残っているみそ汁を啜る。
「……他の皆はどうしていた?」
「いつも通り自分のやりたいようにしておった、武器の手入れやら図鑑の編集やら研究やらな。
……安心せい、お前のことは誰にも言っておらん」
「そうか……助かる」
密かに案じていたことを前もって否定され、思わず安堵の息が漏れる。これ以上、彼らの足を引っ張る訳にはいかない。
「……お前が、皆に気を使われたくないと言うのは分かっておる。じゃが皆にバレるのも時間の問題じゃ、そのときは散々叱られてしまえ」
「そうだな、覚悟しておこう」
だが、あくまでも自分の考えを認められている訳ではないことを念押しされ、苦笑しながら頷き最後の一口を流し込む。
始めは呆然としたものの、改めて考えればこの少女としても体調管理出来ないまま自分がのたれ死ぬのは本意ではないのだ。この身を心配してくれているように見えるのも、やはりあの約束を守らせようとする心理からだろう。
「……また今日みたいなことがあったらうちに言え。具なしみそ汁ぐらいなら作ってやる」
「ああ……ありがとう」
だから、彼女から告げられたその言葉にももう驚きはしなかった。これは、いつか見つかる断罪の答えを迎える為の糧なのだから。
そう結論付けたアレクセイの耳に、パティが拳を握りしめた音はもう届かない。
パティという視点から閣下を見ようとするパティちゃんと、あくまでアイフリ-ドとしてパティちゃんを見る閣下のちょっと切ないすれ違いみーたーいーなー。
アレパティ成立かと思いきや回避させてしまった……。
管理人の中では完全に覚醒しちゃったんだけどな、アレパティ……。
誰か背中押してくれないかな……もう突き落とす勢いで(チラッ
ぽちっとお願いしますm(_ _)m