すると今度は1人で進めるのがめんどくさくなりました。
某隊長首席をオトモに連れたアリョーシャさんと言う太刀厨がいましたら管理人ですので手伝ってやってください。
続きでまさかの大(?)好評なアレパティ(これ)の続きです。
短めですがどうぞ。
それはきっと移行点
その部屋を覗いたのは、大した理由があった訳ではない。ただ、自室に戻ろうと前を通りかかった際に、扉の向こうから呻き声が聞こえてきたような気がしたからだ。
今夜のこの宿が空室だらけでついでに安いのをいいことに、「たまには一人で羽を伸ばす時間も必要だろう」と豪勢にも1人1部屋割り当てられた。
確かここは、アレクセイの部屋だ。
気づいたら、パティはその扉を開けていた。忘れたのかあえてそうしているのかは定かでないが、鍵は掛かっていない。
部屋のほぼ中央にある、テーブルの上の照明魔導器によってのみぼんやり照らされた室内。アレクセイは、その奥にあるソファに上半身だけ横たえていた。彼の手元や周囲には分厚い魔導書が何冊か積まれている。状況から考えるに、精霊化について調べている間にうたた寝をしてしまったのだろう。
「っ……う……!」
また、息を詰まらせているような声が彼の口から漏れる。ここからでは顔がよく見えないが起きている様子はない。
パティはしばしその場で考えてから後ろ手に扉を閉め、彼の方へと歩を進める。
そばで見ると、やはりアレクセイは眠っていた。だが少ない光源により陰影のついた顔には、それでもはっきりと判別できる程の目下の隈と、眉間の皺が刻まれている。時折開く口からは引き続き苦しげな呻き声と吐息、その度に額に浮かんだ汗が重力に従って落ちていく。
――アレクセイは、悪夢に魘されていた。
食事や睡眠、人間本来の休息の時間でさえ、責任感の強いこの男にとっては自らの業によって苦しめられる時間でしかない。それは、日に日にやつれていく顔が証明している。
手を伸ばして、両目の下の隈に指先で触れてみる。思いの外落ち窪んだ眼窩、初めて触れたその肌は栄養不足のためか随分と荒れていた。
肉体的にも精神的にもここまで追い詰められて尚、この男は弱音の一つも吐かず削り取るように命を消費していく。自分が犯した数え切れないほどの罪悪に、少しでも報いるために。
そんな続きを生きることを強要した者の中には、パティも含まれていた。死んで楽になるなど許さない、このまま生き続けて苦しみ抜けと。
自分を殺そうとしていたはずのパティにまでそう言われ、死を望んでいたアレクセイも考えを改めたのだろう。以降は過酷ともいえる生をおとなしく享受している。
(なのに、うちは――)
ぽたり、とパティの手の甲に雫が落ちる。
それは、彼女自身の大きな瞳から溢れ出た涙。一筋、また一筋と頬を伝い、雫となってまた手の甲を濡らす。
眠りにさえ安穏を取り上げられたアレクセイに、何故か胸が痛んで仕方がなかった。
全部が全部、この男の自業自得。アレクセイ自身もそう思っているし、パティもそうだった。なのにアレクセイが食事すら満足に摂れていないことを知ったあの日から、いつか彼に安穏が訪れはしないものかと心のどこかで思っている。
「……フルー、ル……?」
その時、アレクセイの瞼が薄く開いて寝起きの虚ろな声がパティを呼び、彼の顔に触れていた手を慌てて引っ込める。
「……泣いて、いるのか……?」
しかし涙をぬぐう間もなく指摘され、そのまま動きを止めた。するとアレクセイは申し訳なさそうに眉尻を下げ、ゆっくりと彼女の方へと手を伸ばしてくる。
「私はまた、貴殿を悲しませるようなことをしてしまったのだろうか……?」
そんな問いと共に顔に触れた彼の指はひどく優しく、パティの涙の跡を拭う。
つい先ほどまで悪夢に魘されていたはずの男のその行動に、また視界が滲む。
「フルール?」
ようやく意識がはっきりしてきたのか、狼狽えたように手を引き、身体を起こすアレクセイ。だが自分を案じるような視線は変わっておらず、パティは袖で乱暴に涙を拭いながらその視線から逃れる。
「……何もかも……おまえのせいじゃ……っ!!」
そうして説明できない感情を、苛立ちとしてアレクセイにぶつけた。
「……すまない」
的外れともいえる唐突な言葉にしかし、パティに負い目しか感じていない彼はただ謝る。
憎くて堪らないはずの仇敵の哀れな姿に、また苛立ちと涙が溢れた。
大将まさかの日本人化
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