そういえば今公式で人気投票やってますね!
皆様ぜひおっさんに入れてきてあげてくださいね^^
そして次のマイソロかVSに出てもらうんだ!!
はい、では続きでフリリク小説です。
KK様リクエストの悲恋系のレイリタです!
おっさんがかなり酷いです。
本当に、救いがないほど酷いです。
その恋を終わらせたのは
神妙な顔でその少女が部屋に入ってきた時、直感的にヤバいと思った。
「おっさん……」
「なぁに、リタっち?」
それでも回避する方法を見つけられなかった使えない頭は、よりにも寄ってそのまま少女の次の言動を促す言葉を口に発声させる。
すると、少女は押し黙る。緊張からか、不安からか、その小さな拳を握りしめて、頬はだんだんと朱を帯びてくる。
――そのまま、黙っていてくれたらいいのに……。
もしくは「やっぱり何でもない」と身を翻してくれれば、とりあえずこの場での〝それ″は回避できる。そうすれば、次に少女が来る時までにもう少しまともな対策が立てられるだろう。
……だが少女は意を決したように、強い光を放つ翡翠の双眸でしっかりとこちらを捕えてきた。
――もう、逃げられない。
「あたし、あんたの……レイヴンのことが……好き」
シンプルで、直球……この少女らしいと言えばそうなのかもしれない。だが、そんな想いを伝えるのが初めてであろう彼女にとっては、きっと何よりも勇気の必要だった行為に違いない。
か細い身体が震えている、大きな瞳が揺れている……その肩を抱きしめて、顔を覗きこんで、「俺も愛してる」と言えたら――
「どしたのリタっち……何かの罰ゲーム?」
だが現実はそんな思い通りに行くものではない。この娘にとっても、自分にとっても。
目を丸くして、わざと驚いたような素振りを見せてやる。
大丈夫、まだ引き返せる……だから冗談ってことにしときなさい――本当は、そんな合図を送ろうとしていたのかもしれない。
「やーねぇ、最近の若者は初心な女の子も繊細なおっさんもからかって遊んじゃう訳?
はぁ……おっさんついて行けなーい」
わざとらしく大きな溜息をついて腰かけていたベッドに倒れこむと、呆然とこちらを見ている少女から片腕で顔を隠す。
「で、用はそれだけ? 悪いけど、おっさん今日疲れたから寝させてくれる?」
もう片方の腕を真上に伸ばしてひらひらと振って見せると、少女は我に帰ったのか、
「っ! あ、あたしは本気よ!!」
怒鳴るようにそう言って、ズカズカとこちらに寄ってくるのが分かった。
「冗談でも、罰ゲームでもないわ! あたしは……あたしは本当に――!!」
「リタっち」
ベッドのすぐ脇に立った少女がこちらに手を伸ばそうとしてきたところで、冷たくその名前を呼んでやるとぴたりと彼女の動きが止まった。
顔に乗せていた腕を少しだけ動かして、片目で少女を見据える。
彼女は、先ほどより真っ赤になった顔でこちらを見下ろして来ていた。しかし、その表情に今浮かんでいるのは戦慄――理由は確かめるまでもない、自分が向けている冷え切った眼差しと無表情。きっと今の自分は、道化のまま〝彼″の顔になっている。
「本当にそう思ってるんだとしても、それは勘違いよ。
もし、他の皆に対する感情とは違うものがあるんだとすれば……馬鹿で空っぽで、これまでもこれからもまともに生きられないだろう中年に対する憐れみ。それがその正体」
言葉を、防御壁のように並べ立てて行く。守るべきは自分か、彼女か……それすら、分からないままに。
「ふざけないで!!」
少女が、一喝する。
「あたしが、同情と恋を混同してるって言うの!? あんたにそんなこと分かる訳――!!」
「分かる」
少女が言い終わる前に鋭く即答すれば、彼女はまた気圧されたかのように口をつぐんだ。
「ついこの間まで自分と魔導器だけの世界に閉じこもってたんだから、どうせ他人への同情も、恋なんてのもしたことないんでしょ?
どっちもリタっちには初めての感情、それでいて相手は何の将来性もないろくでなしの中年……常識的に考えれば、前者の確率が高いことぐらい俺でも分かる」
盾だったはずの言葉は一転して剣へと変わり、何の穢れもない少女の心を抉る。やはり守るべきは自分なのかと、吐き気がした。
「ああ、それとも――」
刃は止まらなかった。
もう一度起き上がり、もはや棒立ち状態の少女の前に座ると胸部のボタンに手を掛ける。
「リタっちが好きなのは、俺じゃなくてこっちなんじゃないの?」
広げて見せたのは、左胸。鈍い輝きを放ちながら、彼女を苦しめるだけの自分を生かしている魔導器――それは同時に、魔導器一筋だった彼女の心を更に抉る最悪の凶器だった。
「っ!!」
少女が短く息を吸い、また拳を握りしめる。爪の食い込んだグローブが悲鳴を上げているのが聞こえ、その間から見える指は白く、さきほどよりすっと小刻みに震えていた。
「殴れば?」
そして、少女がそれを自分に向けて振り上げようとした時、また鋭い声で彼女の行動を遮った。
「何なら魔術ぶっ放してもいいんよ? どうせガキんちょのパンチなんて痛くないし……。
その代わり、気が済むまでやったらもうさっきみたいなことは言わないでちょうだい」
「………………!!」
少女の瞳が、悲しみに、絶望に、見開かれる。薄い唇がぎゅっと噛みしめられ、振り上げられた拳にはより一層の力が入り……やがて、彼女の瞳に見る見る透明な液体が溜まっていくのに合わせて、ゆっくりと落ちた。
「あ、たしの気持ちは……迷惑だ、ってこ……と?」
泣きじゃっくりを必死に堪えながら、彼女は震える声で尋ねてくる。
「……そうね、悪いけど俺はリタっちをそういう対象としては見れない」
何事もなかったかのように服を直すふりをしながら、少女から目を離す。その心を散々切り刻んでおきながら、傷付き、嗚咽を上げる姿を見ることができなかった。
「……あたしだけ、だったのね……」
涙腺が決壊し、流れ出したまま止まらない涙を手の甲で拭いながら、少女は言う。
「一緒に買い物当番やってドキドキしたのも……頭撫でられて嬉しかったのも……おっさんが、幸せそうに笑ってるの見てあたしも幸せな気持ちになれたのも……全部、あたしが勝手に盛り上がってただけだったのね……」
服を全部直し終えても、顔は上げない。上げられない。
きっと今少女の顔を見たら、そのまま腕の中に抱きこんでしまうだろうから……。
「……おっさんも残念だわ。リタっちに男を見る目がないなんてね」
非情な言葉を口にしながら、軋む心臓の上に乗せた手が震えているのを悟られないように、そっと上着を羽織りなおした。
「ごめん……邪魔したわね」
それだけ言って、リタは出て行った。
部屋に残ったレイヴンは引き続きベッドに腰かけていたが、しばらくしてから立ち上がって部屋のドアへと歩み寄る。
手を伸ばしてノブの上にあるつまみを回せば、ガチャリと音がしてそのドアはより強固に彼を外界から遮断する。そして彼はそのままドアに背中を預け、ゆっくりと床に座り込んだ。
「……リタっちのせいだかんね……」
もう傍にはいない少女の名を口にし、呼びかける。
リタが自分に好意を抱いていることは、随分前から気付いていた。それと同時に自分自身も彼女に魅かれていることは自覚していた。
それでも、こんな自分が彼女を幸せに出来る訳がないし、何より彼女がずっと自分の傍にいてくれるなんて保証もない。だから下手に想いを伝えてお互いが後々傷付くよりは、今のままの関係が続いていけばいい……そう考えていた。あのリタが、自分から思いを告げてくるなんてありえないと高を括って、それでいて彼女の気持ちに甘えて――
(でも、それももう終わり……)
からかうふりをして彼女に話しかけていたのも、褒めるのに乗じて頭を撫でていたのも、仲間の1人として彼女の姿を目で追っていたのも……何もかも。
「っは、最っ低ぇ」
何もかも自分でぶち壊しておきながら、尚もあの少女に縋ろうとしている自分に残ったのは、自嘲と、胸の痛みだけだった。
悲恋系って難しいですね……orz
あれ、これ切な……い……?
KK様のみお持ち帰り可です。
今回はリクエストありがとうございました!!
ぽちっとお願いしますm(_ _)m