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今日も幸せレイリタ日和。
2025/04/21 (Mon)10:16
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2011/10/16 (Sun)16:23
現パロ続きです。
ようやくです、お待たせしてすみません。

Heartful Life ♯18:ふんわりとした、午後のひと時


『ただいま』
 買って来たものをたくさん抱えて、あたしとキャナリはおっさん達の家に帰って来た。
(あれ?)
 玄関を開けて中に入ると、最初に感じたのは違和感。
(甘い、匂い……?)
 そう、かすかにではあるけどお菓子みたいな甘い匂いが部屋に漂っていた。
「おかえりー」
『おぉかえりぃ~』
 奥から返って来たのはイエガーの声と、何故か消え入りそうなおっさん達の声。……どうしたんだろう。
「リタの部屋はどこ?」
「あ、その左手のドア!」
 だが前にいるキャナリに部屋を聞かれ、慌てて答える。
「じゃあ、ちょっとお邪魔するわね」
 彼女はそう言うと、あたしが示した部屋のドアを開ける……ってしまった! 今あたしの部屋散らかって――
「へぇ、レイヴンにも聞いていたけれど読書家なのね、リタ」
 あっちこっちに積んである本を見たキャナリはそう言うけど、ドン引きされた訳でもないようなので一安心。……でも、今度はあたしの部屋を見かねたおっさんやシュヴァーンに片付けるように言われたら素直に片付けるようにしておこう……。
「ごめん、散らかってて……荷物は、空いてる所に置いといてくれたらいいから」
「ふふ、気にしないで。いきなり押し掛けたのはこっちだし……じゃ、この辺りに置いておくわね」
 とりあえず本と本の隙間に買い物袋を置きながらあたしが言うと、キャナリもフローリングの上に自分が持っていた分を置く。そして改めて部屋の中を見回し――
「あら……?」
少し驚いたように、キャナリの動きが止まった。
「どうかした?」
「この子……」
 キャナリが見つめていたのは、ベッドの上に置いていたあのクマのぬいぐるみ。
「この子、リタの……よね?」
 彼女は手を伸ばして、クマの頭に手を添える。様子の変わったその言動に脳内では疑問符を浮かべながらも、あたしは頷いた。
「う、うん……最初、物置になってたこの部屋で埃かぶってたんだけど、あたしが貰ったの……」
「そう……」
 そうしてしばらくクマの頭を撫でていたけど、やがてフッと息を漏らすキャナリ。

「そっか、そうなんだ……」

 まるで何かに納得したかのような、そんな声だった。
「キャナリ……? そのクマがどうかしたの?」
 恐る恐る聞いて見ると、キャナリは気を取り直したようにあたしの方を向き、答える。
「ああ、ごめんなさい。私の家にも同じぬいぐるみがあるのよ。今は、リバーの遊び相手になってるけれど……」
「同じ……?」
「そう。大学の時に誕生日プレゼントで貰ったのよ。朝研究室に行ったら、私の椅子に座っていたの。
……送り主は分からなかったんだけど……ね」
 苦笑して説明してくれた後、キャナリはまたクマを見つめる。
「…………?」
 その横顔がどことなく憂いを帯びているように見えて、あたしの頭に浮かぶ疑問符が増える。
 一体どういうことなんだろう。キャナリの誕生日プレゼントと同じぬいぐるみがここにあって、ずっと埃かぶってて……そう言えば、あたしがこの子を見つけた時のおっさんとシュヴァーンの反応もおかしかったような気がする。……でも、それが意味するところを今のあたしは考え付かなかった。
「リタ」
「な、何?」
 キャナリが再びこちらに視線を向け名前を呼んできたので、慌てて返事をする。
「この子、名前はつけてるの?」
 そして予想もしていなかった質問をされ、「へ?」と一瞬間抜けな声を出してしまった。
「あ、いや……つけてないけど……キャナリは、つけてるの?」
「ええ、フアナって言うの。可愛い名前でしょう?
 リタもつけてみたら? せっかくのルームメイトなんだし」
 そう言われて、今度はあたしが改めてぬいぐるみを見つめる。
 実際のところ、この子を抱いたまま読書をしてみたり(もふもふが気持ち良くて丁度いい大きさなので邪魔にもならない)、あの家出事件以来話しかけることもあったりと、よくよく考えたらお世話になっている。
「じゃ、あ……ビクトリア」
 思わず口にしたのはあたしがうんと小さい頃、まだ両親が生きてた時に読み聞かせてもらっていた物語の主人公……だったと思う。もうタイトルも覚えていないけど、滅亡した国の王女様か何かで、自分の国を滅ぼしたドラゴンを倒す度に出て、最後にはドラゴン倒して素敵な王子様と結婚してめでたしめでたし、という話だ、確か。
今となってはただのご都合主義なおとぎ話にしか感じられないけど、他の冒険活劇と違って女が主役という点と、その主役が強くてかっこいいという理由から当時のあたしはかなりその物語にのめり込んでいたような気がする。
「ビクトリア……いい名前だわ。これからも大事にしてあげてね」
 クマ――ビクトリアに添えたままだった手を戻し、今度は少し背をかがめて目線の高さを合わせながらあたしの頭を撫でるキャナリ。
「う、うん……」
ないがしろにする理由なんてあるはずもなくて、あたしは、こっくりと頷いた。
「キャナリ、リタ、ちょっと台所来てもらえるかな?」
 その時、ノックが響いてドアの向こうから聞こえてくるイエガーの声。
「何かしら……?」
「行ってみましょ、リタ」
 首を傾げるあたしに、キャナリがそう促した。

 

 キッチンに行くと、椅子に座ったおっさんとシュヴァーンがぐったりとダイニングテーブルに突っ伏していた。

「うぅ……兄貴……白いよぉ、甘いよぉ、フワフワだよぉ……」
「ま、負けるなレイヴン……あれはバリウムだ、バリウムだと思え……」

 そのままの体勢で訳の分からない会話をしている中年双子を尻目に、キャナリは奥のソファに座って読書をしているアレクセイとその膝の上にちょこんと乗っているリバーの前まで進んでいる。
「ちょっと先輩、他人の子供に人体解剖図なんて見せないでください……って、前にも言いましたよね?」
「いいではないか、子供にとってはただの絵本だ」
「まぁま~!」
 母親に向かって大きく手を伸ばすリバーを抱き上げ、キャナリは「まったくもう」と呆れたように溜息を吐く。
「リタ、ちょっと冷蔵庫覗いてごらん」
 ダイニングテーブルの前に突っ立ったままだったあたしに、イエガーがまた声をかけてくる。振り向いて見るとイエガーはニコニコと笑っていて、親指で冷蔵庫を指し示していた。
 言われるまま冷蔵庫に近づき、突手に手をかけて開けてみる。すると中には、食材や残り物に囲まれて明らかに目立つように置かれた皿が一つ。
「これ……クレープ……?」
 そう、その皿に乗っていたのはクレープだった。手にとって取り出すと、綺麗に畳まれた生地の中から白い生クリームとイチゴがのぞいている。
 ……帰って来た時の、そして今もキッチンに残っている甘い匂いは、このせいだったんだ。
「お菓子の一つも作れないのにレディのお世話を仰せつかるなんて愚の骨頂! ということで2人に作らせてみました」
 今度はぐったりとしたままのおっさんとシュヴァーンを指しながら、そう説明するイエガー。
「イエガーと先輩が?」
「いや? 指導したのは俺で、学部長殿は主に出来あがった試作品を食べてケチをつける役」
「人を姑のように言うのではない」
 彼とそんなやり取りをしながら、キャナリとアレクセイがこちらにやってくる。
「食べてみたら? リタ」
「うん」
 キャナリの言葉に頷いてから、もう一度おっさんとシュヴァーンを見てみる。
「……無理に食べなくていいわよ……」
「口に合わなかったら遠慮なく言ってくれ……」
 何とか(げっそりとした)顔だけ上げた2人と目が合い、力なくそう言われた。

「……いただきます」

 包み紙に入ったクレープを持ち、皿をテーブルに置いて口元に近づける。甘くて、香ばしくて、とても美味しそうな匂いが強くなった。
 そして、一口。
 甘いもちもちした生地に、少し甘さを押えた生クリームが混ざり、更にイチゴの酸味が乗ってくる。
(これ、すっごく――)
「美味しい……!」
甘いものが苦手なおっさん達が、(半強制だったようだけど)あたしの為に作ってくれたクレープはとても美味しかった。それに加えてそのことが何だか嬉しくて、たったそれだけのことで今ぐったりとしてる2人が可笑しくて、感想を口にしながら思わず頬が緩んでいた。
「ありがと。こんな美味しいクレープ、食べたの初めて」
『………………』
 礼を言いながらまたおっさんとシュヴァーンを見ると、2人はなぜかあたしを見つめてフリーズしていた。

 スパーンッ!

 そこで何故かイエガーとアレクセイが履いていたスリッパを脱いで手に掴み、それぞれおっさんとシュヴァーンの脳天をひっぱたく。
『ぎゃふん!』
「?」
 2人が仲良く悲鳴を上げ、ゴツンと額をテーブルにぶつける音が響く。
 その流れの理由が一切理解出来ず、あたしは首を傾げながらもついついクレープをもうひとかじり。
「だぁー!」
 すると今度はキャナリに抱かれたリバーが目を輝かせてこっちに手を伸ばして来た。
 子供の高い声に慣れないあたしは、思わずびくりと肩を震わせる。
「あらあら、リバーもクレープが食べたいのね。でも、あなたはまだだーめ」
 身を乗り出すリバーを押えながらキャナリが宥めようとするけど、リバーは「あー」だの「うー」だの言って落ち着く気配はない。
 とりあえずクレープをリバーの視界から隠した方がいい、あたしはそう判断して一旦テーブルの上の皿に置くけど、リバーは何故か相変わらずあたしの方に手を伸ばしている。
「…………?」
 不思議に思って、気付いたらリバーとキャナリの方に一歩踏み出していた。

 ぺたり。リバーの左手が、あたしの頬に触れる。

 多分初めて触れる子供の手は小さくて、柔らかくて、温かい。
 あたしに触れた途端、きゃっきゃと笑いだすリバー。一方のあたしはどうすればいいか分からず、ぽかんとリバーを眺めたまま、ただその手の感触を感じていた。
「おっと、早くも素敵なレディに目をつけたか……リバーも隅に置けないな」
 その様子を傍から見ていたイエガーが、茶化すようにそんな言葉を飛ばしてくる。
「ふふ、まったくね……。リバー、このお姉さんはリタ」
「あ……リタよ。よ、よろしく……」
 続いてあたしをリバーに紹介するキャナリに釣られて、あたしもリバーに名乗ってみた。
「いたぁー?」
 あたしの名前を呼んでくれようとしてるのか、きょとんと目を丸めながらそんな声を上げるリバー。
「リ、タ」
「り……たぁ?」
「そう、リタ」
「りた……りた!」
 とりあえず訂正すると、舌足らずながらもさっきよりずっと正確な発音であたしを呼んでくれた。そして、今度はそのまま両手を広げてあたしの方に身を乗り出してくる。
「え……」
 その動作であたしに何を求めているのか一瞬分からなかったけど、ひょっとして――
「すっかりリタが気に入ったみたいね、ちょっと抱いてもらってもいいかしら?」
 苦笑したキャナリが腕を伸ばし、リバーをあたしに寄せる。
 でも、あたし子供の抱き方なんて分かんないし……落としそうだし……。
「りたぁ~!」
 だけどあたしと距離が縮んでリバーが更に顔を輝かせるもんだから、ぎこちない動きで腕を伸ばしてみる。
 落とす程ではないけど意外と重い小さな身体をキャナリの見よう見まねで抱きこむと、ぎゅうと肩を掴まれ耳元で実に楽しそうな笑い声が起こった。
「耐えられなかったら言ってね」
「ううん、平気……」
 単純にリバーの重さの話か、出かける時車の中で話していたことを踏まえてか、キャナリがそう申し出てくるけど、あたしは首を横に振る。
 すると、リバーがほっぺたをあたしの頬に押し付けてきた。……すごい、ぷにぷにだ。
 その感触がとても心地よくてあたしからも軽く押し付けると、また笑い声がしてあたしの服を掴む力が強くなる。

「可愛いんだ……子供って……」

 ポツリとあたしがそう漏らすと、キャナリは「大変だけどね」と付け加えながらも嬉しそうに笑う……と同時に、またもやおっさんとシュヴァーンがスリッパでひっぱたかれる妙に小気味よい音が部屋に響いた。













クマの身の上についてはいずれサイドストーリー的な感じでホントはサイレント漫画を上げたいんですが、どうもすぐには無理っぽいので(しかも結局文章になるかも)事の顛末だけ載せておきます。
だいたい察しはつくかと思いますが、気になる方は反転でどうぞ。

キャナリの誕生日当日、こっそり買ったクマのぬいぐるみを持って早朝から大学に行ってキャナリの研究室に向かうレイヴン。
扉を開けようとすると、すぐ背後で人の気配。慌てて振り向くとそこには自分と同じクマのぬいぐるみをもったシュヴァーンが!
キャナリへの誕生日プレゼントもサプライズ企画も完全にカブってしまったことで、鳥兄弟は互いの分身がキャナリに恋していることを知る。
しかし兄弟で取り合うような甲斐性もなく、2人とも身を引くことを決意。片方のクマをキャナリの椅子に置いて、もう1匹は物置部屋へ。この際キャナリの手元に行ったのがどちらが買ったクマかなんてことは関係ない。
昼、嬉しそうにクマを抱えるキャナリにその辺のギフトショップで買ったプレゼントを渡す鳥兄弟。
そんな鳥兄弟をニヨニヨしながら隠れて観察する博士課程の先輩アレクセイ。
その日の内にイエガーがキャナリに告白、結果彼の1人勝ち。


っていう話だったんだ☆

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