アンソロやら小説やらコミックやらドラマCDやらが一気に発売されるこの週が。
準備? バッチリだぜ!!
心の方だけだがな!!
まさに金欠!!
続きで何かシュヴァリタです。
帰ってきたおっさん
手首を掴まれ、壁に貼り付けられた。
そして彼は背をかがめ、睨むようにこちらを見据えて来る。
あの男であって、しかし全く違う男――
「レイヴン……」
震える声で再びその名を呼ぶと、彼の手に力が入り、掴まれたままの手首が痛む。
「シュヴァーン・オルトレインだ……」
「何度も言わせるな」と鋭く訂正され、それだけで怯んでしまいそうになる。
「レイヴンは虚像だ、忘れろ」
「……嫌よ」
声が消え入らないよう、精いっぱい声帯を震わせる。
「だって、レイヴンは確かにいたもの。
あたしは科学者、確かに存在したものをなかったことになんかできない」
その言葉は決して嘘ではない。だが虚勢を張らなければ、まともに話せそうになかった。
それくらい今の彼は威圧的で――恐ろしかった。
溢れそうになる涙をこらえ、唇をかみしめながらも彼をにらみ返す。
すると彼はわずかに眉を寄せ、言った。
「……そうか、なら好きにすればいい。
だが私にもう奴を求めるな」
レイヴン――それは彼にとって、憎しみの対象。
正体を隠すために無理やり押し付けられた、忌々しい道化の仮面。
本来なら祝福すべきなのかもしれない。
彼が、本当の自分を解放できたことを。
受け入れるべきなのかもしれない。
彼の、偽りの自分を捨てたいという望みを。
真に、彼のことを想っているのなら。
でも――
「でも、あたしが恋したのはレイヴンの時のあんたなのよ!」
どんなに彼が否定しようとも、彼がレイヴンであったという事実は消えない。
そして、今現在自分がまだ彼に抱いている気持ちも、決して虚像ではない。
「…………っ!!」
涙腺が、決壊した。
苦しい。
彼の言葉が、自分の気持ちが、容赦なく心を締め付けている。
流石に困惑したのか、彼の手が緩み、口からは嘆息が漏れる。
「リタ……」
先ほどよりずっと優しい声。哀しげに揺れた瞳も、見間違いではないだろう。
「――確かに、あれは私だった。だが、奴も私も、君たちを騙し続けていたんだぞ?」
「知っ……てる」
「エステリーゼ様を攫い、アレクセイに引き渡した」
「うん……」
「それでも君は、奴がいいのか?」
「だって……望んでやったことじゃない……でしょ? あんたも……あいつも……」
「…………ああ」
「……ねぇ、シュヴァーン」
掴まれていた方の腕を下げ、彼の手を握る。そしてもう片方の手はゆっくりと彼の顔に伸ばした。
「あたしは、あんたが望むならあんたがシュヴァーンのままでも構わない……。ううん、シュヴァーンでいてほしい。……あんたのことが好きだから、あんたの望むままでいてほしい。
でもね、レイヴンだってちゃんと生きてたの。少なくとも、子娘一人に恋心抱かせるくらいにはいい男として……」
伸ばした手が、彼の顔に触れる。
「あたしの言いたいこと、分かる?」
顔の左半分を隠すような鬱陶しい前髪をどけてやると、彼の顔は奴に近くなった。
彼の碧い双眸が、自分を映す。
「――ねぇ、聞こえる? レイヴン。
あんたが否定されたら……あたしがシュヴァーンに抱いてる恋心も否定されちゃうのよ?」
そう言って、寂しく微笑んだ。
シュヴァーンだろうがレイヴンだろうが、自分はこの男を確かに愛している。いや、どちらもといった方が的確であろうか。
だからこそ、どちらを否定されてもこちらの気持ちまでがなかったことにされてしまうのだ。
だがそれすら彼が望むのであれば――もう、何も言うまい。
彼は茫然とした様子で、こちらを見つめ続けていた。
その口が紡ぐ答えを待つ。
思いのすべてを吐き出し切った今、自分にできるのはそれだけだ。
「……参った……な」
やがて、彼の表情に苦笑が広がった。
「私には君の気持ちを否定などできない……きっと君と、同じ気持ちを抱いているから。
私も、奴のことを認められるよう努力しよう」
そう言うとリタの手を握り返し、もう一方の手でやんわりと頭を撫でてくれる。
その表情が、仕草が、あまりにもあいつそっくりで――
「リタっちが、それを望むなら……」
おさまっていた涙が再びあふれ、視界がぼやけたと思った次の瞬間には、彼の服に顔を押し付け声をあげて泣き出していた。
おっさん自身やっぱりレイヴンの方が嫌いだった場合。
何だかんだ言って管理人はハッピーエンドしか書けないんです><
どうでもいいけどウチのレイリタには常にまいたけの名前が……・。
ぽちっとお願いしますm(_ _)m