開設して3カ月……まさかこんなに回るとは……。
もう嬉しくて嬉しくて言葉にできない、です。
次からのキリ番はやや間隔を空けます。
とりあえず次回は7777HITで。
最近の更新のメインがキリリクばっかなので、更新がより一層停滞しそうな気がしないでもないですが、10月からまたペースを復活させていきたいなぁと思っておりますです、はい。
さてさて、今回のキリ番ゲッターA.K様からのキリリクはレイリタで「お化け屋敷ネタ」。
完成しましたので続きからどうぞー。
暑い時には冷たいものを
「………………」
「………………」
「………………」
「……あの、リタっち」
「何?」
「ノーリアクションで進んでいくのはやめてあげない? 何かお化けさんたちかわいそうなんだけど」
薄暗い通路を進みながら、先行するリタにレイヴンはおずおずと声をかける。つい先ほど彼女の前に飛び出してきたゾンビ――のよく出来たかぶり物をした人間が、がっくりと肩を落としてまた物陰に戻るのを眼で追いながら。
この建物に入って早数分、ずっとこんな調子だ。
「リアクションって、何すればいいのよ?」
「そりゃあ怖がるとか……」
「だって怖くないし」
「じゃあせめて突然飛び出してきたのにびっくりするとか」
「流石に素人の気配ぐらい分かるわよ、だから別に驚かない」
そう応酬をして引き続き前を進んでいくリタに、レイヴンは大きく溜息を吐いた。
戦いの息抜きに、とナム孤島を訪れた一行。毎度毎度、この平和な島に来ると何かしら驚くものが増えているのだが、今回もまた例外ではなかった。
敷地内で最も大きな建物――校舎というらしい――の裏に、かなりの存在感を放ちながら佇んでいる、見るからにおどろおどろしい建物が一つ。『お化け屋敷はじめました』と、冷やし中華のようなノリの看板がぶら下がったその入り口には、多くの客が並んでいた。
「面白そうね、入ってみましょ?」
にこやかにそう提案したのは、もちろんジュディスである。
いろいろといざこざもあったものの、結局全員が入場を承諾。2人1組がルールということで、これまたジュディスの提案で男女のペアに分かれることになった。つまり組み合わせはほぼ必然的に決まってしまう訳で。
「良かったなおっさん、アーセルム号で言ってたあれ、実践するチャンスだ」
レイヴンの肩をたたき、女性陣には聞こえないようにユーリが話しかけてくる。
「へ? 何のこと?」
だがレイヴンはピンと来てない様子で首をかしげた。すると彼はそんな彼を半眼で眺めながら何の感情も籠っていない棒読みで補足する。
「『いやーん、怖ーい、ひしっ』『大丈夫さ子猫ちゃん僕がついてる』とか何とか女の子と急接近するチャンス」
「……俺様、そんなこと言った?」
「ああそりゃもうノリノリで説教されたな、俺」
そう言う青年の顔は無表情であるが、明らかに楽しんでいる。
そして、当のレイヴンもその元凶となった会話を思い出していた。たらり、と気温の為だけではない冷や汗が頬を伝うのが分かる。
「あは、あはははは」
不用意な自らの発言を呪いつつ、ひきつった笑いを浮かべ弁解の言を述べる。
「や、やぁねぇ青年……冗談に決まってるじゃない」
現にあの時は、軽薄な道化としてユーリをからかっただけだった。が、実際に自分に返ってくると動揺せざるを得ない。
俺が? リタっちと? 急接近? いやいやいやいや。
だがよくよく考えてみると、なぜ動揺しているのだろう。今となっては互いに想いを寄せあっている仲で、仮に実現すれば困るどころかむしろ嬉しいはずなのに。
頭の大部分は動揺全開であるが、わずかばかり残っていた冷静な片隅でふとそんな疑問が生まれる。
「何照れてんだよおっさん」
――ああそうか、照れ臭いんだ。
レイヴンにとっては人生経験上恐るるに足らないとはいえ、このお化け屋敷のレベルは決して低くない。この手のアトラクションには何度か入ったことがあるが、セットといい、脅し役のメイクやかぶり物といい、まったくもってよく出来ている。少なくとも自分の経験の中では最上級のお化け屋敷だ。
ところが、目の前の少女はおびえる様子も驚く様子もない。あの幽霊船アーセルム号では誰よりも怖がっていたのにもかかわらず、だ。レイヴンだけでなくパーティの大多数の予想を裏切ったことは確実だろう。
少なからず残念な思いがこみ上げてくることから察するに、何だかんだ言って彼女の怖がる姿とか抱きついてきてくれることに結構期待していたようだ。ホントに変態かもね、俺様。
「言ったでしょ? あたしは死者の意志が云々だとか亡霊の影だとか、そういう非科学的なものが嫌いなだけ。だから人間だって分かってるもんを怖がったりしないわよ」
お化け屋敷を抜け、残りの2ペアが出てくるまで近くのベンチで待っている間に尋ねてみると、そんな答えが返って来た。
「も、もちろんアーセルム号だって別に怖くなんかなかったけどね!」
慌ててそう付け加え、レイヴンが買ってやったソフトクリームに口をつけるリタ。その様子が相変わらず可愛らしくて、「分かってるって」と苦笑しながら思わず頭を撫でる。
なるほど、彼女らしいと言えば彼女らしい。確かにあの幽霊船とは正反対に、こちらは何から何まで科学的に説明できる事象の寄せ集めだ。だが、そう納得する半面でふとある思いが脳裏をよぎった。
「……ま、死者だとか亡霊だとか言われたら俺もその部類なんだけどね」
つい口から漏らしてしまったことに気付き、はっとしてリタを見る。
案の定、彼女は責めるような眼でこちらを睨み上げてきていた。
――またやってしまった。しかも今回は、よりによって彼女への当てつけのような形で。
「や……ははは、聞こえちゃった?」
本日2度目のひきつった笑い。より一層険しくなるリタの視線が痛い。
「いや、あのねリタっち……さっきのはえーっと……」
何とかうまく誤魔化そうとするが、その役を果たせそうな言葉が浮かんでこない。
目を泳がせるレイヴン。その口に、甘く冷たいものが押し込まれる。
「ぶはっ!?」
レイヴンが吹きだす直前にリタはそれを彼の口から離していた。正体はもちろん、彼女が食べていたソフトクリーム。
「今度言ったらここに売ってる全部の味食べさせるから。たしか5種類だったかしら」
彼の発言への罰なのだろう。
「うへ……甘……」
本当は鉄拳でも飛んでくるかと思っていたのだが、殴られても実は大して痛くない分、こちらの方が相当効いたかもしれない。
「……ほら、ちゃんと生きてるじゃない」
涙目になりながら口の周りについた分を拭う彼の耳に、ボソリと呟いたリタの言葉が入ってくる。再度目を向けると彼女はまだこちらを見据えてきていた。
「甘いもんを甘いって感じるのも、それが嫌だって感じるのも、生きてる証拠でしょ。それにあたしはあんたのこと、す……嫌いじゃないし。だから、あんたは死者でも亡霊でもないの」
そう言うと、顔を赤く染めてすぐにふいっと向こうを向いてしまった。前半の言葉はともかく、言い直した後半の言葉にその理由があるのは明白である。
どうやら、自分も彼女も思っていたことをつい口走ってしまう癖があるらしい。妙な共通点を持ってしまったものだ。
「ははっ、それもそうよね」
とにかくそんな少女の言葉が嬉しくて、笑いがこみあげてくる。反省の態度の1つでも見せればいいものを、怒られて喜ぶなんてまったくタチが悪い中年もいたものだ。
「……分かればいいのよ」
そう言って解けたソフトクリームをまた舐めはじめたリタの頭に、再び手を乗せる。愛しさと、わずかばかりの反省の念を込めて。
ついでに「お、それおっさんと間接キッス?」と指摘してみると、今度こそ本気で殴り飛ばされた。
怖がるリタっちも書きたかったんですが、今クーデレなリタっちがブームなのでこうなっちゃいました。
ゲーム中の様子をみると、実際は人工的なモンでもやっぱり怖がる気がします。
そもそもお題にあまり添えてない気が……すみません\(^p^)/
A.K様、こんなんでよければどうぞお持ち帰りください。
リクありがとうございました!!
ぽちっとお願いしますm(_ _)m