あれれ～？ おかしいぞ～？

なんで更新がまいたけばかりなんですかねぇ……（ドン引き）




生存パロでまいたけとおっさんの薄暗い会話文。

続きからどぞ―。

ただその時を静かに待つ



　さわさわ。
　穏やかな風が吹き抜け、木々が断続的に音を立てる。その枝葉が揺れる度に見え隠れする空は、相変わらず気味の悪い異形に覆い尽くされていた。
　1本の幹に背を預け、焦点を定めない目でその空を見つめる。醒めない悪夢に蝕まれきった精神は、もうそれを見て取り乱すこともない。ただただ、暗く冷たい感情が湧きだし、それに浸る。
　さわさわ。
　幾度目かの風が頬を撫でたところで、アレクセイは瞳を閉じた。
　睡眠さえ拒む精神が瞼の裏に映すのは、これまでの自分の所業。人を人とも思わず、多くの命を踏みにじってきた己自身。
（ころしてくれ）
　何度も繰り返し懇願してきた言葉を無感情に心の中で繰り返す。
（ころしてくれ）
　早く、速く……さもないと、また傷つかなくていい者まで傷ついてしまう。
（ころして――）
　その時、木々の音に紛れて自分を包囲していた複数人の陣形が崩れたのが分かった。
　元騎士団長の実力を警戒し、慎重に慎重を重ねてこちらの様子をうかがっていたのが裏目に出たのだろう。暗殺術に長けた彼が、気づいてしまった。自分には抵抗するつもりは全くないというのに、勿体ないことだ。
「……余計なことを……」
　静寂が戻ったところで気だるげに瞼を上げ、いつの間にか目の前に佇んでいた紫羽織の男に言葉を転がす。
「相変わらず可愛げのない御仁だね」
　わざとらしいため息に続いて、レイヴンからはそんな言葉が返ってくる。怒っているのか、呆れているのか……月が逆光になって表情はよく分からないが、どちらにせよ、自分を殺す動機も得物も持っているのにそれを実行に移さないばかりか余所の暗殺者の邪魔までする彼の感情などもうどうでもよかった。
「君からの復讐は実に効果的だ、〝ダミュロン″」
　望んでもいないのに命を助けられ、許されるはずのない生でただ辿るだけの世界は、まるで地獄だ。これほどの意趣返しは他にない。
「……本気で言ってる？」
　道化ていたレイヴンの声音に、影が差す。
「さて、な……冗談、ということにしておこう」
　ああ面倒だ。何もかも。
　今すぐこの喉を潰せば、鼓膜を破れば、こんな面倒なやり取りもせずに済むのに、自らの身を傷つけることをアレクセイは許されてはいない。
「……言っとくけど、俺は大将を諦めたりしないよ」
　やけに力のこもった声で、レイヴンが宣言する。
「今の大将には届かなくても、届くまで何度でも言ってやる。
　俺は……今の俺は、大将に助けられたことを感謝してる。だから、俺も大将を助けたい。俺みたいに10年かかることになっても、大将がまたしゃんと生きてくれるまで、このお節介を止めるつもりはないから」
　自分も同じ境遇を知っていてなお彼がそう言うのは、本当に自分の生を認められたからなのだろう。だが、アレクセイには今の彼の気持ちなど理解できないしこれから先理解できるとも思わない。何しろ、自分と彼で彼では状況が違いすぎる。
「私が、10年も生き永らえると思っているのか？」
　つい先ほどの出来事を忘れたわけでもあるまいに。自分の命を狙って、ギルドや貴族から刺客が放たれている。仮にそれらを全部かいくぐり、あの星喰みを倒したとしても、その後自分に待っているのは帝国による裁判だ。要人暗殺の首謀、非道な人体実験、皇族への反逆及び姫君の拉致、帝都の不法占拠、星喰みの復活……枚挙すれば暇がないほどの大罪で、どのような判決が出るかなど目に見えている。
「せっかく自分の手元に取り戻した命だ。私などにかまけるくらいなら、本当に君のことを思ってくれている者たちのために生きたまえ」
　今までも、何度か繰り返したことのある言葉だった。
　本当に彼を救ったのは、自分ではない。ドン・ホワイトホースと凛々の明星の一同だ。その前者を謀略の末に死に追いやり、後者の前に立ちはだかった自分に、彼が心を砕く価値などない。
「自分の命ぐらい自分の好きに使わせてちょーだいよ、大将」
「……そうか、ならば好きにするといい」
　ただ、レイヴンがくしゃりと寂しそうに笑ったのが分かって、アレクセイは言い返すのを止めた。これ以上の応酬は、きっと誰のためにもならない。
　さわさわ。
　風がまた、枝葉を揺らしていく。
　話は終わりだとばかりにゆるりと再び瞳を閉じたアレクセイの意識は、現実の悪夢から過去の悪夢へと――









個人的に生存まいたけは立ち直ってからもいいけどやっぱ死にたい死にたい思ってる時が好きやなって……思ってん……。