ゆみこさまからのキリリク、レイリタの恋話です。
おっさんとリタっちが文字通り恋の話をしてる訳ですがこんなんでよかったんだろーか……。
幸せの応酬
「リタっちは、青年のことが好きなんだと思ってた」
「はぁ?」
唐突にレイヴンが口にした言葉に、リタは思わず読んでいた本から顔を上げた。
目が合ったレイヴンはテーブルを挟んで向かいに座り、頬杖をついてこちらを眺めている。
「どうしたのよ、いきなり」
「いんや? よくこんな可愛い娘がおっさんの恋人になってくれたなーと思ったら、つい、ね」
そう言うとレイヴンは幸せそうにへにゃりと笑い、手を伸ばしてリタの頭を撫でる。
「だからって、何であたしがユーリのこと好きって話になんのよ」
その手を煩わしそうにしながらも払いのけることはせず、リタはそう尋ね返した。
するとレイヴンは「んー」と考え込むように言葉を口をつぐんでから、語り出す。
「最初会った時から、何となく思ってたのよ。リタっちって青年の言うことにはあんまり口答えしてなかったし、青年相手だと結構素直に弱音吐いてたみたいだし……ま、今思えば嬢ちゃん大好き人間同士で気が合ってただけなんかも知れんけど」
「エ、エエエステル大好きってどういうことよっ!」
最後に付け加えられた言葉に赤面して噛みつくと、レイヴンは声を上げて笑い、リタの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。それからその手を離すと、少しだけ感慨深そうな表情をして呟いた。
「そうでなくっても、おっさんは1回リタっち達を裏切った酷い男だかんねー。まさか、こんな風に旅が終わってからも一緒にいられるとは思ってなかったわ」
そしてまた幸せそうに微笑むレイヴン。いきなり何を言い出すのかと思えばただ惚気ているだけだった訳だが、よくよく考えてみれば自分の気持ちを疑うような発言をされたようにも思え、リタは少しだけ、何とも言えない一種の不快感のようなものを感じていた。
「おっさんだって、ジュディスの方が好きだったんじゃないの?」
「はぁ?」
尋ねてみるとほんの数十秒前の自分と同じ反応を返され、いかに目の前の男が突拍子のない言葉を投げかけてきたのかと改めて認識する。おそらく、レイヴン本人も少しは反省していることだろう。
「いつも何かある度に『ジュディスちゃーん』とか鼻の下伸ばしてたじゃない」
「ああ、あれねぇ……」
だがしかし、こちらは多少なりとも自覚があるらしく、リタの指摘に対して彼は「そんなこともあったわねぇ」などと遠い目をしている。
「あれはほら、恒例行事って言うか何て言うか……ジュディスちゃんみたいなナイスバディな女の子にはああするのが礼儀みたいなもんでしょ?」
「どこの世界の礼儀よ、それ」
随分苦しい言い訳に、リタの口からは自然と溜息が漏れる。
「はあ……まあ、あんたがどうしようもないドスケベおっさんなのは今更どうしようもないけど……」
「リタっちひどい」
意地悪なことを言って困らせてやろうと思ったのに、いけしゃあしゃあとデタラメをのたまうレイヴンの様子に、早くも気を削がれてしまって結局直接攻撃に終わる。彼の方はがっくりと肩を落としてみせながらも、大して傷ついた様子はない。
――そうしていつものらりくらりと言葉をかわしているくせに、この男の言葉に自分は心を揺さぶられてばかりだ。
「あんたみたいなのを好きになったあたしも大概よね」
思ったままをぼそりと呟いた言葉に、一度テーブルに突っ伏していたレイヴンが弾かれるように顔を上げた。
何故かポカンとしている彼には疑問を抱きつつも、聞こえていたのならいい機会だ。ついでに先程彼が発した失礼極まりない発言についてもきちんと訂正を加えておこう。
「……言っとくけど、あたし、これまでもこれからもあんた以外の男に興味ないから」
睨みつけるようにして放った言葉は紛れようもない事実で、「だからこれ以上アホなことを言うな」という牽制も込めていたのだが、レイヴンからの反応は何故か照れたような赤面。
「リタっちって、たまにおっさんより男前なこと言うわよね……」
また突拍子もない発言だ、意味が分からない。
「は? 何言って――」
問い返そうとした言葉はしかし、突然身を乗り出してきたレイヴンの唇によって遮られてしまった。
「おっさんだってリタっち一筋よ、これまでも、これからもね」
顔を離し、幸せそうに笑うレイヴンのその言葉に、今度はリタが、自分がいかに気恥かしい言葉を言ってのけたのかを自覚する番だった。
なんかタイトルが十郎太ボイスの某スパイ映画みたいになったけど気にしないでください。
初期のTOVってユリリタ・レイジュディ推しっぽかったなーと思って。
ゆみこさまリクエストありがとうございました!!
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