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今日も幸せレイリタ日和。
2025/04/21 (Mon)10:09
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2010/03/19 (Fri)23:56

現パロが結構進んだので連投しまーす。

でもぶっちゃけ時間軸はあんまり進んでないよ!!


Heartful Life ♯8:取り戻したマイウェイ


「ちょっと! 何か掃除機がガリガリ言ってるんだけど!?」
「知るか! そのあたりはお前のテリトリーだろうが!!」

 本を読み終わり、ぱたんと閉じた時にタイミング良く聞こえて来た声で途端にあたしは現実へと引き戻される。
 窓の外の空はいつの間にか燈色を帯び始めていて、時計を見ると時刻は3時。
 続いてあたしは大きく伸びをしながら、未だにあの2人の声と掃除機の音が聞こえる部屋の方を見る。廊下を埋めるものの量は朝よりずっと多くなっていて、もう玄関の方へは抜けられそうにない。
(……ていうか、まだやってたの……?)
 掃除機をかけてるってことは、掃除はほとんど終盤なんだと思う。
 それでも、あたしが起きる前から始めてるんだから結構な時間続けているはず。かくいうあたしも結構な時間読書してた訳だけど、こっちは趣味だし……。
 それにしても、医学部の教科書というだけあってなかなか難しい本だった。人体組織とか細胞とか、既にあたしの頭に入っている生物の内容より先にある理論が展開されていて、思っていたよりずっと夢中になってしまった。
 そんなことを考えながら頭上に突き上げていた掌を下ろすと、左手が柔らかいものに触れた。あのクマのぬいぐるみだ。
 頭に乗っていたあたしの手をどかして、またクマを抱き上げて正面から眺める。目と鼻しかないけれど愛嬌のある顔……やっぱり、捨てられなくて良かったと思う。
(そういえば、どうしてこんなぬいぐるみがあったのかしら?)
 まさかあの中年共の趣味じゃあるまいし、万が一そうだとしてもあんな扱いを受けているのは不可解だ。
(……ま、あたしには関係ない話だけど)
 だがそこまで考えたところで、いつもの冷めた姿勢に戻る。考えても仕方ない他人の事情にまで首を突っ込むのはあたしの趣味じゃない。今あたしが興味を持っているのはあくまでこのぬいぐるみ、その背景なんてどうでもいいじゃない。
 その頭を一撫でして、もう一度脇に置く。
 さて、と。次の本は――

「ああーっ!!」

 その時、一際大きな叫び声が響き、何事かと廊下を見るとおっさんが時計を見て愕然としていた。
「もうこんな時間!? やっば! 昼飯食い損ねた!!」
 そしてあたしと目が合うと、慌てた様子で尋ねてくる。
「リタっちごめんね、お腹すいてない!?」
「……別に。だってずっとここから動いてないし」
 そもそも、読書や勉強に没頭して食事を忘れることなんてあたしにとって珍しいことじゃない。
「そ、そう? まあそれもどうかと思うけど……んじゃあとりあえずコーヒーでも淹れるわ、流石におっさん達も疲れたし……。
 兄貴ー、休憩しましょー」
 おっさんが部屋の中に向かって呼びかけると、少し疲れた顔をしたシュヴァーンが出てきた。
「いやー、あんだけ物があるとは思わなかったわねー。必死こいて片付けてたらもう3時よ?」
「朝からやっていなかったら今日中には終わらなかっただろうな……」
 苦笑するおっさんに嘆息交じりにそう答え、シュヴァーンはそのままあたしの前を通り過ぎてベランダに出る。
 閉めたガラス戸の向こうでシュヴァーンはこちらに背を向けてごそごそと手を動かし、やがてその口元あたりから細い煙が上がり始めた。……ああ、煙草か。
「はい兄貴今日の分終わりー」
 キッチンではおっさんがコーヒー豆の袋を開けながら、そんな言葉を口にする。
 そしてその後すぐにあたしを肩越しに見て、状況を説明してきた。
「職業柄、煙草は1日3本までってことにしてんのよ。おっさんはもう吸ってないけどね」
 「ついでに屋内は完全禁煙よ」なんてことまで教えてくれるけど、シュヴァーンの行動と、部屋に灰皿と煙草の匂いがないことから容易に想像はついてた。
 そのままおっさんは鼻歌を歌いながらコーヒーの準備を進める。疲れてる(しかも昼食は食いっぱぐれた)はずなのに何で上機嫌なんだろ。
(……まあいいや、それより次の本を――)
 そう思って腰を浮かしかけたあたしの後ろから、腕がぬっと伸びてきて、ソファに置いていたあたしがさっきまで読んでた本を掴んだ。
「細胞生理学か……懐かしいな」
 振り返ると、少しだけ煙草の残り香をまとったシュヴァーンがあたしの後ろに立っていた。彼は持ち上げたその本をぱらぱらとめくりながら、あたしに問う。
「どのあたりまで読めたんだ?」
 全部は読めていないこと前提のその質問に少しむっとして、あたしが彼を見上げる目つきが少し鋭くなった。

「もう、全部読んだわよ」

 あたしがそう答えた瞬間、シュヴァーンの手が止まり、ついでにおっさんの鼻歌も止まった。
『…………は?』
 2人が同時に目を丸くしてあたしを見つめてくる。
 そんな中年共にはそれ以上何の言葉も返さず、あたしは今度こそソファから立ち上がって次の本を物色するべく廊下へと向かった。

 

 その後、あたしが新たに引っ張り出した医学書を読んでいる内にとうとう日が暮れていた。
「リタっちぃ!」
「ふにゃあっ!?」
 突然耳元で名前を呼ばれ、驚いたあたしは思わず間抜けな声を上げる。
 のけぞって、あのクマのぬいぐるみに抱きつくような体勢になりながら見上げると、おっさんが呆れ顔でこちらを見下ろして来ていた。
「ちょっ、ちょっとおっさん! いきなり大きな声で呼ばないでよね!!」
「あの、もう5回呼んでるんですけど……」
 そう言っておっさんは大きなため息をひとつ吐き、すぐに気を取り直したように笑みを浮かべると、ダイニングテーブルを指さす。
「晩ご飯、出来てるわよ。読書は後にしてほら行った行った」
 言われてみるとそこからはみそ仕立てのいい香りが漂ってきていて、既にシュヴァーンも席に着いていた。そしておっさんはさりげなくあたしの手から本を奪い、傍にあるテーブルの上に置く。
「……分かったわよ」
 本当はまだ読んでいたいけど、昼食抜きというのもあってそこそこ空腹感があったから、あたしはむすっと答えて渋々ながらもテーブルに向かう。
 昨日と同じ席に座りながら料理を観察。晩ご飯も今日はおっさんが作ったのか、豚汁とサバのみそ煮という純和風のメニュー。
 ……正直、缶詰以外のサバみそを初めて見た。
「昼飯なかった分多めに作ってあるからねー」
 あたしより少し遅れて席に着いたおっさんは、そう言ってまたパチンと手を合わせる。
「ささ、2人ともどーぞ召し上がれ。いただきまーす」
 結局、真っ先に料理に手をつけたのもおっさんだったけど。

「リタっちって集中力すごいのね」
 具だくさんの豚汁をすすっているあたしに、おっさんがそう言ってきた。
「何が?」
 尋ね返すと、おっさんはがくっと脱力する。
「何がって……朝から夕方までずっと同じ本読んでて、その後も別の本読んでたじゃない。掃除で結構ガタガタいってたのに気が散る様子もなかったし、おまけに呼び掛けても何の反応もないし」
「それ、皮肉?」
「まさか、感心してんのよ。勉強熱心な子だなーって」
「お前も少しは見習え」
 横からそう茶々を入れてくるのはもちろんシュヴァーン。
「ぶー、兄貴ひどーい」
 子供みたいに口を尖らせるおっさんを彼は「気色悪い」と一蹴し、「それにしても」とあたしを向いて続ける。
「あんな難しい本、よく1日もかけずに読めたな……俺達は授業の解説があってようやく理解出来てたんだが……」
「高校の生物と化学が頭に入ってれば分かるレベルじゃない。細胞内や細胞間の情報伝達とか、生体の恒常性の維持とか」
「いやいや、あれそんなレベルじゃないって。たしかあれ3年の時の教科書だから、少なくとも大学の1年と2年レベルの内容も踏まえてたはずよ?」
「ふぅん……じゃあ昔読んだ本にそれくらいのレベルのものがあったのかもね」
 手をブンブンと振って訂正してくるおっさんに、あたしは淡々とそう答えた。
 あたしが学校の授業で吸収した知識は少ない。というのも教科書を読んだだけでその内容が理解出来るから、予習の段階で授業内容が完了してしまう訳。授業中は教科書の先の項目を読んでたり、全部読み終わったら図書館で借りてきた高校レベル以上の専門書を読んでたり……あたしの勉強は、それで成立していた。
 シュヴァーンも少し驚いた様子で、興味深そうにあたしに尋ねてくる。
「つまり、独学の知識であの本を読んでいたのか?」
「そういうことになるわね」
『へぇ……』
 おっさんとシュヴァーンの声が重なる。
 そんな2人を尻目に、あたしはサバみそを口へと運ぶ。……うわ、これご飯と合いすぎ。

「……でもま、ご飯を忘れるのだけはお勧めしないよ? おっさんが言えることじゃないけど」

 その時、おっさんが諭すような口調でまた声をかけてきた。
 横目で見上げると、こちらを向いて苦笑いを浮かべている。

 ……何よ、結局お説教じゃない。

「……大きなお世話よ。あたしは平気だし」
「そんなこと言わないの。ごはん食べ忘れてヘロヘロになって、大好きな読書ができなくなったら困るっしょ?」
「それが自業自得ならあたしは受け入れるわ。誰かに迷惑かける訳じゃないし」
 淡々と言ってのけた言葉に、おっさんは閉口する。

 だって、ずっと一人で生きてきたあたしにとっては何もかもが自己責任だもの。人に迷惑をかけるのも嫌だし、かけられるのはもっと嫌。何よりその方が楽だから、あたしはだれにも頼らない、誰のせいにもしない。

 でもきっと、次にあたしに浴びせられるのは――
「強いんだね、リタっちは」
「……え?」
 おっさんの口から漏れたのは、予想と180度違った言葉だった。
「自分の責任は全部自分で背負う……うん、カッコいいわ、すごく」
 腹を立てた様子もなく、おっさんはあたしに優しく笑いかける。
「でもねリタっち、少なくとも今はおっさんとシュヴァーンがお前さんのこと心配してる。
 あ、迷惑かけるなって言ってる訳じゃないわよ? 俺達はただ、リタっちにもっと自分のこと大切にしてほしいんよ。他ならぬリタっちのためにね」
 さっきのあたしの言葉だけで、このおっさんはどこまで理解したんだろうか。
 まるであたしの考えを全て見透かしているかのように、おっさんの言葉はあたしのココロの深いところを突いて来た……ような気がした。

「……じゃ、勝手に心配してれば?」

 でも、今まで誰にも面と向かってそんなこと言われたことなかったあたしにとってその感覚は慣れないもので――どう返していいか分からなかった。
 ふいっとそっぽを向いて、しばし止まっていた食事を再開する。
「ははっ、そーね。勝手に心配しとくわ」
 いい加減激怒しても仕方ない言葉を吐いたにもかかわらず、おっさんはそう笑い飛ばした。
 ……ホント、不思議なおっさん。
 ふとシュヴァーンを見ると、はぁ、と大きな溜息を吐いていた。














どうでもいいけど医学部の授業内容とか調べるのが地味にめんどくさいよ\(^o^)/

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